會田 茂一 (アイダ シゲカズ)
1968年生まれ。大学在学中よりギタリストとしての活動をスタート。
佐藤研二(bass)& 小松正宏 from bloodthirstybutchers(ds)とのバンド“FOE”を中心とし、中村達也率いる“LOSALIOS”、高桑圭(GREAT3)とのユニット“HONESTY”、近年では髭(HiGE)に電撃加入する等、様々なアーティストと共にバンド活動を行っている。
また、映画・CM音楽の制作や、木村カエラをはじめとする数多くのアーティストへの楽曲提供やプロデュースを手がけており、幅広い音楽活動を展開中である。
関連サイト:http://www.aidagon.com/
――會田さんはRM-05をプライベートスタジオに導入されて約2年ほど経つそうですね。まず、以前使用されていたモニタースピーカーに代わってRM-05を導入するに至った経緯を教えてください。
「昔からお世話になっているWatusiさん(※角田敦。Lori FineとのユニットCOLDFEETのプロデューサー/プログラマー/ベーシストであり、DJとしても90年代から活躍してきた)が紹介されていたのを見てから気になっていて。ただ、僕が以前にメインのモニターとして使っていたのはよくDTM初心者の方にお勧めされている様な小さいスピーカーで、それも黄色っていう色が良くて選んだものだったので、特に細かいこだわりの無い僕が同軸スピーカーを使っても大丈夫なのかなとも思っていたんですね。その後にWatusiさんと直接お話した時に、『価格も抑えられてるし、アイゴンに合ってると思うよ』ってお勧めしてくださったので導入しようと思いました。」
――実際にRM-05を体験してみて、決め手になったポイントは何でしたか?
「一時、モニターをパワードスピーカーに切り替えたこともあったんですけど、僕のスタジオみたいな簡単なセッティングだと小さいモニタースピーカーと差が有り過ぎてノイズが発生したりもして、制作をする前のセッティングに時間が掛かってしまっていたんですね。でもRM-05は、以前使用していた2つの中間ぐらいの僕が丁度欲してた音量感ですし、ミックスの確認とかも自宅で行うことが多くなってきたので奥行きと定位がしっかりと分かり易く聴き取れるのは凄い良いですね。僕のスタジオは吸音も防音もしていないので音量感は特に重視していたことで、RM-05は大きめに出していてもうるさい印象は無いし、小さめでも細部まで聴こえるので、このスタジオ環境にマッチしているなと思いました。」
――會田さんはアーティストのプロデュース以外にも、CM音楽や映画のサウンドトラックなど様々なタイプの音楽を制作されていますが、それぞれモニターする際に気にすることは異りますか?
「僕の場合はそれぞれによって圧倒的に違うということは無くて、主に気にしていることは同じ様な部分ですね。ひとつ挙げるとしたら、CMや映画の音楽はやっぱり映像有りきなので、より定位とか奥行きを映像とマッチングさせることが必要になります。アーティストに曲を作ったり自分の制作をする時は割と自由にやっているので、自分の中で整理すれば良くて、そこまで定位とか奥行きにこだわることはないです。僕は基本的にはギターを使っての制作なんですけど、特にギターだとトラックのどこに据えるかの単純な定位で音色とかリズム感が大分変わって聴こえますし、サビで一気に広がる定位とか、曲の構成をも担う定位感とかがあるので、その点はどの制作においても気にしています。ただ定位と言っても僕はエンジニアリング作業をしている感覚は無くて。GarageBandに付いてるLとRを動かすだけなので、メーターできっちりと振るよりも、何となく振ったものに対して逆側にも振るみたいな感じの簡単なイメージですね。」
――RM-05を導入してから進め易くなった作業工程は何ですか?
「大きいパワードのスピーカーの時は、音を出した段階でゴージャスになり過ぎちゃって自分の志向とはちょっと違ったので、それを曲げて直していく作業が必要だったんですけど、RM-05は音を素直に発してくれるので、導入してからは出た音に対して次々と音を積み重ねたり、発想を加えたりする作業が凄く楽になった気がしますね。ドラムの音源によって奥行き感が変わって、それによってシンセサイザーとかシンセベースの絡ませ方も変わるんですけど、その絡ませ方とかはRM-05を使うようになってから大きく変わったと思います。」
――全体的なワークフローへの変化はありましたか?
「僕はパッと思い付いた時から実作業に入るまでの時間はなるべく短くしたくて、そういったスピード感を重要にしている部分があるので、ソフトやセッティング立ち上げてからのギターとかリズムの音作りに時間を掛けないで済むようにはなりましたね。たまに、いつもと違うリズムの音源を使ったりするんですけど、その時にも少し加工をしたりだとかはあまり無くて、どんな音源を使っても音楽的に鳴ってくれるので発想を加えていき易いし、やり過ぎた時の戻し易さとかを含めても、作業にスピード感が出るようになりましたね。」
――RM-05の導入後に制作した楽曲の中で、定位感や奥行きを理想的に仕上げることができた楽曲は何でしたか?
「木村カエラさんの最新アルバム『PUNKY』に入っている『THE SIXTH SENSE』っていう曲のデモ録りです。これまで木村カエラさんに提供させていただく楽曲もバンドの曲が多かったんですけど、『THE SIXTH SENSE』は打ち込みがベースになっているところが多くて、シンセサイザーの出し方とかギターの混ぜ方とかも新鮮に聴こえましたし、自分自身が思う“ドンシャリな音”にマッチする部分も沢山ありましたね。『THE SIXTH SENSE』に関してはシーケンスが一杯走る曲を割と久々に作ったかなという感じでした。あとはこのスタジオで作った楽曲として挙げると、ウルフルズのトリビュートアルバムに収録された木村カエラさんの『ガッツだぜ!!』のOKテイクとか、長澤まさみさんが出演されている UNDER ARMOURのCM「I WILL. MASAMI NAGASAWA」の楽曲『Set you free』を制作などをさせて頂きました。」
――アーティストに向けて楽曲を作る際に欠かせないことは何ですか?
「イメージのやり取りやコミュニケーションはもちろん取るんですけど、その中で、僕から“この人にはこういう曲を歌ってもらいたい”とか“こういうタイプの曲をやったら面白いんじゃないか”みたいな提案は割といつもしています。シングル間違いなしみたいな楽曲を提案することはほぼ無くて、どちらかと言うと、アルバムをカレーライスで例えた時の“らっきょう”みたいな機能を果たす楽曲を作りたいという想いですね。僕はギターのチューニングも基本がアメリカのインディーアーティストとかがよくやっているドロップDになっていたり、コードの押さえ方からして普通とは少し違うので、それはもうミュージシャンやプロデューサーとしてそういうことなんだなと最近は感じていますね(笑)。」
――先ほど仰っていた実作業に入る前段階の発想の部分で、會田さんが制作のアイディアを得るために行なっているルーティーンなどはありますか?
「CDをプレイヤーに入れて音楽を聴いている時もあれば、You Tubeを見ながら面白いバンドだなって思った時にふと浮かぶこともあるんですけど、僕の場合は、外を歩いている時とか、映画を観た時とか、本を読んだ時とかにイメージする曲の方が育っていくような気がしていて。このスタジオでもレコードをかけて本を読んだり、ギターを何気なく触ったりして自由に過ごしながら、ふと思い付いた時にデスクに来て作業するような感じですね。CMとか映画音楽の制作をする時も題目や映像を頭に入れながら散歩をしたり。なので、デスクのパソコンに向かってじっくり曲が降りてくるのを待つみたいな作業はあまりしないんです。あと僕は忘れちゃうことが多いので、パッと浮かんだ時にiPhoneの音声メモに吹き込んで、スタジオに戻ってからそれを聴きながら作業をすることも多いんですね。その時に立ち上げてから音色作りに時間がかかったりすると集中が切れちゃうので、そういう作業のスピード感にはRM-05を含めたセッティングは役立っていますね。」
――時間をかけずにスピード感を保ったまま楽曲を完成させるまでは、どういう流れで実作業をされているんですか?
「僕はある程度楽曲が人に聴いてもらいたいなっていう形にまでなったらもう手放して、その後から実作業になって、仕上げていくことの方が多いんです。なので、僕は色んなエフェクトを立ち上げて1~2日かけてじっくり音作りをするということが全く無くて。初めからずっと完成を突き詰め続けるよりも、どちらかと言うと、楽曲の根幹や原型を作るためにこのスタジオやデスクが機能していることが多いですね。」
――アーティストのプロデュースとアレンジ、CM音楽、映画のサウンドトラックなどと、ジャンルの異なる仕事を手掛ける中で、會田さんが楽曲制作を行う際に共通して常に意識し続けていることは何ですか?
「僕は“細かいことにはこだわらない”っていうのがこだわりですね。このスタジオもいわゆるスタジオのようなかっちりとした感じの雰囲気ではないですし、集めているギターも変なギターばっかりですし。ここのデスクに付いてるマイクもあまり日本では見ないんですけど、Metallicaが『St.Anger』を作っている時にコンソールの横で仮歌を入れるのに使っていたのを見て欲しいと思って買ったもので。アメリカのラジオ局のKEXPでやってるスタジオセッションとか、DJとかが普通に使ってるマイクなんですけど、自分の声とかに合うか分からず買ってるんですよ。もう本当に形から入ることが多くて。でも人とは違う視点からこだわれているのかなと、今思いましたね。とにかく僕は洋楽を聴いてきた世代で、洋楽への憧れが圧倒的にある中でずっとバンドをやってきた人間なので、そんなに強い意味はないですけど、日本の音楽に疑問を持ち続けながらやってきた部分はありますね。括りで言うと、ローファイと言われているバンドやアーティストにはシンパシーを感じますね。と言いつつも、4チャンネルのカセットトラッカーやオープンリールを使うみたいなこだわりも無いんですよ。むしろ今のギターとGrageBandとRM-05のこのセットで同じぐらいのことが十分できる気で制作しています。なので、これからも“細かいことにはこだわらない”で続けていけたらと思いますね。」
Interviewer : Hiromi Matsubara
ウーファーとトゥイーターの音源位置を同軸上に揃えた新開発の同軸ドライバーにより、ニアフィールド環境でも位相のずれを発生させず、高解像度の音源を正確に正確にモニタリングすることができます。
Find out more