SP-16は、音質は抜群。音が太くてクリアで、フィルターもアナログ回路を通っているから、それだけで音もリッチになるんです高橋健介(LUCKY TAPES)
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Dave Smith Prophet-6で採用されているアナログディスクリートフィルター回路の搭載により、楽器のような豊かなサウンド表現を演出
—— 早速ですが、TORAIZ SP-16(以下:SP-16)はどういうきっかけで使い始めたのですか?
高橋健介(以下T): きっかけは、jizueの井上典政さんが使っているのを知って、紹介してもらったんです。ちょうどLUCKY TAPESもシンセを使っている音楽性で、それまではSP-16とはまた別のサンプラーを使って鳴らしていたんですけど、ちょうど新しい機材に変えたいなと思っていたタイミングだったので。
—— 使う決め手になったのはどういう部分でしたか?
T: まずは、これまで使っていたサンプラーよりも段違いに音が良かったことですね。あとは液晶タッチディスプレイの画面が大きくて、操作性が良かったことも決め手になりました。その時はどこまでどういう使い方ができるのかを深く知らなくて、後々に色んなことを知っていったんですけど、今ではソロのライヴでもLUCKY TAPESでもかなり使わせていただいていて、大活躍しています。
—— 具体的に、現在のLUCKY TAPESの制作あるいはライヴにおいて、SP-16はどういう風に使用されているのですか?
T: 基本的にLUCKY TAPESでは、シンセやオルガンの音源など追加の音を鳴らすライヴの機材として使っています。僕たちはライヴだとサポートメンバーを合わせて9人編成なんですけど、鍵盤楽器を弾ける人が少なくて。鍵盤楽器が弾けるメンバーは同時にヴォーカルとして歌っていて手が空いていないので、SP-16のパッドを使って演奏するのは別の人に任せています。
最近は同期をしている曲もあるんですけど、実際に生でサンプルパッドを叩いた方が同期での演奏とはまた違った、生のグルーヴ感があると思っています。基本的にはレコーディングで録音したデータを切って、SP-16に入れて、それぞれのパッドにアサインして鳴らしています。でもやっぱりライヴでやり続けていると音源とは演奏の感じがちょっとずつ変わってきたりするので、何か違和感があったら、SP-16はリアルタイムに録音もできるので、リハーサルなどで鍵盤を弾いてもらったのを録音してパッドに、という使い方もしていて、かなり臨機応変な機材だなと思います。操作もし易いのでリハーサルでも手間取ることなく、パパっと作業が済むのも便利ですね。
操作もし易いのでリハーサルでも手間取ることなく、パパっと作業が済むのも便利ですね
—— ソロのライヴや制作に関して、SP-16を取り入れてから変わったことはありますか?
T: ビートメイクに関して言えば、もうパッドをお気に入りのサンプルだけで構成しているのでSP-16で打ってしまった方が早かったりして、ビートのアイデアは出しやすくなりましたね。以前使っていたサンプラーは音質が良くない印象があったんですけど、SP-16は、音質は抜群。音が太くてクリアで、フィルターもアナログ回路を通っているから、それだけで音もリッチになるんです。なので、DAWでやっていた作業でも、今はサンプル音源をとりあえずSP-16に入れてからピッチを変えて鳴らしたりしてます。
あとは、アップデートされてから使えるようになったSCALEとかの追加機能も手軽に試し易いですし、今はSpliceのウェブ上でサンプル音源を使ってシーケンスをプログラミングしたものをそのまま入れられたり、サンプル音源そのものもどんどんウェブで入手できるので、そういった音源とか機能からアイデアとしての可能性を引き出すまでの作業は早くできるようになりました。時代の中で制作の方法とか環境はどんどん変わっていくと思うので、そこに素早く対応してくれるというのは嬉しい部分ですね。
—— まさしくSP-16は、直感的な操作で制作のアイデアを出すことができたり、そのアイデアを形にできたりするというのが大きなポイントのサンプラーです。高橋さんが個人的に思う、SP-16を使っていて「これは気持ち良い!」と思う時はどんな時ですか?
SP-16ほど一瞬でアサインが済むサンプラーって他には実はあまり無いんですよ
T: やっぱりLUCKY TAPESというプロジェクトはメンバーが多い分、確保できる時間が限られていて、色んなことが起こった時に臨機応変かつ素早く対応しなきゃいけないことが多いので、さっきのリハーサルでの話みたいにSP-16で直接レコーディングをしてそのままサンプルを編集できるのは便利です。その点で、データの読み込みと、パッドへのアサインが早いのは凄く気持ち良いですね。意外とアサインする作業に手間取っちゃうことが多いので、SP-16ほど一瞬でアサインが済むサンプラーって他には実はあまり無いんですよ。あとはアタックの波形をいじる時は画面も見易いですし、反応も分かり易くて良いですね。
—— ちなみに、SP-16にもあらかじめ2GB分のサンプル音源が入っていますが、気に入ってよく使っているサンプルはありますか?
T: ドラムのキック音とかはインストールすることもありますが、統一した方が良かったりすると内蔵のサンプル音源をよく使ったりします。SP-16に内蔵されているTR-808とかTR-707とかヴィンテージドラムマシンのサンプル音源を結構使ってますね。あとサックスのサンプルとかもライヴとかでも使ってます。
—— ではSP-16に搭載されている機能やエフェクトの中で、高橋さんのお気に入りはどれですか?
T: 最近は、リバーヴが活躍していますね。薄っすらかけたり、音をもう少し馴染ませたいと思った時に重宝しますね。あとは普通にバンドでのアンサンブルになると、LOWが出過ぎているなと思う時がたまにあるので、それを抑えるために内蔵のハイパスフィルターを使ったりもしますね。
—— Dave Smith Prophet-6 譲りのアナログフィルターはライヴでもよく使われますか?
T: そうですね。シンガーと一緒にパフォーマンスをするソロの現場の時とかは、その人のトラックのオケが全部プログラミングされているので、例えばその人がコール&レスポンスをしている時とかに、アナログのハイパスフィルターいじって、レスポンスのタイミングで音を薄くしてみたりとか、DJ的な使い方をしていますね。これもしっかりしたフィルターのツマミがあるSP-16だからこそ、直感的にできることかもしれないですね。
—— TORAIZを使っている他のアーティストの方を参考にしたり、意見交換をしたりすることはあるのですか?
T: NABOWAの景山奏さんはSP-16もAS-1もめちゃくちゃ使っているので、会う度にあれこれ聞いていますね。実際に使い方を見せてもらうこともありますし、アップデートをして機能が追加されることを知ったのも、奏さんのSP-16を見ていた時でした。たまに「これ内蔵サンプルのあれですよね!」って聞いて、「バレたか(笑)」って言われるみたいな、そんな会話をすることもあります(笑)。
3人組のバンド、LUCKY TAPESのギタリスト。2015年にアルバム『The SHOW』でデビュー。ホーン・セクションや女性コーラス、パーカッションなどを加えた総勢9名のライブ・パフォーマンスが各方面より高い評価を集め、2018年5月にメジャー・デビュー。様々なアーティストのサポートやDJとしても活躍中。