見た目はすごくシンプルでクールだけども、それぞれの箇所がものすごく考えられていて、全てに関して意味があるDJ KRUSH
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—— まず、最初にDJ KRUSHさんは、HDJ-X10(以下、X10)の前に、前モデルのHDJ-2000MK2を使われてそうですね?
DJ KRUSH(以下K): すごく気に入って使ってたんですけど、ツアー中にどこかで失くしてしまって。あれはあれですごく音が良かったし。失くしてから、急いで他のを買ったりもしてみたんだけども、やっぱり全然合わなくて、困ってました。
—— X10を手に入れて、まず音質面での印象はいかがでしたか?
K: 音が上から下まで、しっかり出ているし、解像度が高いですね。HDJ-2000MK2も良かったけど、こっちのほうが音が抜けている。低音もしっかり出るので、例えば、ツアーを回って、ホテルに戻って選曲を変えたりっていう作業をヘッドフォンでした時に、前の曲が低音出てて、次の曲が低音弱いからどうしよう?とかっていう判断を明確に出来る。あとは、現場でも音が取りやすい。フェスとかだと、横に置いてあるモニタースピーカーが、ちょっとしたクラブ並みの音をしてるから、それを片方の耳で聴きながら、その音に負けないくらいの音が出てないとダメなんだけど、そこにも全然耐えてくれる。
—— 実際に現場で使った時の印象はどうでしたか?
K: 気持ち的にはすごく安心感があるのと、盗まれちゃマズいなって気持ちになったってのはすごいなって(笑)。今まで他のヘッドフォンは、あんまりそういう気にはならなかったけど、今回は結構お気に入りで。使い込んで(エージングで)自分の音になってきて、耳もようやく慣れてきたので、これはもう手放せない。プロダクションでもすでに使っちゃってるからね。その音が自分の耳にインプットされている。
—— すでにX10を制作にも使われているのですか?
K: 3月21日に出るフルインストのアルバムの中で4曲くらい、このヘッドフォンをモニターにして作ったかな。スピーカーでは馬鹿みたいにデカい音は出せないんで、ヘッドフォンで曲の細かいところを見てみたり。あと、ミックスしている時って、いろんな聴き方するじゃないですか。小さいモノラルのスピーカーで聴いてみたり、ラジカセで聴いてみたり。ヘッドフォンもその一環で。けど、ポジション的には非常に大事な位置にいますね。スタジオではモニター用に3つのヘッドフォンを使ってるんですけど、X10もそのうちの一つで、全体を見る時にかなり使えました。もっとドンシャリで聴きたい時とかは、他の物を使うけど、トータルでまとめて聴きたい時に使うのはこれ(X10)でしたね。
—— 話を戻して、X10のDJの現場での具体的な使い心地を教えてください。
ヘッドフォンはあまり普段気にしてないけど、この何気なく出来る動作が、どれだけ大切かって。X10はしっかりとそれについてきてくれる
K: ストレスが無いですね。ヘッドフォンを耳に当てたり、外したりっていう動きって何気ないけど、これがサッと出来るのはすごく大切なことで、実はすごく考えられている。ダメなヘッドフォンだと、この動きだけでストレスになる。例えば、ミックス中にコンマ何秒で動いている時があるんだけど、大事なタイミングを逃したりもする場合もある。実際、現場に出ちゃうとミックスに夢中になるから、ヘッドフォンはあまり普段気にしてないけど、この何気なく出来る動作が、どれだけ大切かって。X10はしっかりとそれについてきてくれる。
—— KRUSHさんは、DJ中はヘッドフォンを肩に挟みながら、片耳だけでモニタリングするやり方ですが、そのスタイルでのX10の使用感はいかがですか?
K: 肩に挟んでも、全然滑らない感じが良いですね。あと、このフィット感もすごく計算されてるでしょ? イヤーパッドの耳に当たる部分の圧とか。あと、変にゴテゴテしているところも無いし。見た目はすごくシンプルでクールだけども、それぞれの箇所がものすごく考えられていて、全てに関して意味がある。けど、パッと見ただけでは、そんな風には見えないし、それが表に出てないっていうのがすごいですね。渋すぎるし、そこが超格好良いと思いますね。
—— 大きさや重さなどに関してはいかがでしょうか?
K: あんまり気にしたことはないかな。けど、あんまり気にならないってことは、問題無いってことでしょうね。あと、持ち運びは折り畳んでて、すごく小さくなるから、全然問題ないですね。いつもケースには入れないで、裸の状態で持って、そのまま畳んでカバンの中に突っ込んでるんですけど、今のところ大丈夫です。ツアー中は毎日のように荷物を全部開けて出して、また片付けてっていうのを繰り返しで。けど、X10は丈夫で耐久性もありそうなので、そこは安心しています。
—— 耐久性という部分では、X10はヘッドバンドとイヤーパッドとはナノコーティングされていて、汗にも強くなっていますね。
K: 汗をかいても大丈夫っていうのは、大切ですよね。今までは現場で使った後にヘッドフォンをちゃんと拭いたりしても、イヤーバッドがひび割れたり、あとすごく匂いが出ちゃったり。クラブによっては、照明がバンバン当たって、昨晩飲んだ酒が全部出ちゃうくらい汗をかく時もあって(笑)。まだ、そういう場所では使ってないけども、どれだけ耐えてくれるのか? それはちょっと期待したいですね。
—— ちなみに、すでに海外でもX10を使われているんですよね?
K: X10を手に入れてから、何回か海外に行ったんですけど、結構使っている人がいましたね。これだけいろんなDJに現場で使われてるんだから、やっぱり使いやすいんだろうなって。けど、使っている人が多いので、自分のだって分かるように印をつけました。昔、パイオニア(株)さんが出していたポータブルCDプレーヤー(LOOPMASTER)のDJ KRUSHモデルを作ってもらった時のステッカーが残ってたので、それを貼って(笑)。あと、ツアー中は時間があると、ホテルで曲作ったりとかするんですけど、その時にもX10は使えますね。音がしっかりしているから、モニターとしてそれをあてにして、曲を作っていけるんで。昔はDJの現場用と制作用で、ヘッドフォンを二つ持って行った時もありましたね。DJは皆、そうだと思うけど、なるべくツアーでは荷物は増やしたくないし、さすがにヘッドフォン二つはきつい。けど、これ(X10)があれば一つで済みますね。
—— 今日はX10との音質の比較用にHDJ-X7(以下、X7)とHDJ-X5(以下、X5)も持ってきているので、ここで聴き比べをお願いします。
K: (X7を聴いて)これはこれで悪くないですね。音のグレードは高いし、すごく聴きやすくて。でも、若干、解像度が狭まっている感じはするけど、全体の音の出ている感じはX10とも近い。
—— では、次にX5をお願いします。
K: X5も評判良いって聞いています。どれだけ違うか試してみたかったんですが、これは結構ドンシャリに聴こえますね。上が強いという印象。あと、こう聴き比べてみると、やっぱり3機種とも違いますね。それを考えると、僕は制作もやるんで、やっぱりX10が一番使いやすい。でも、X7やX5も使う人によっては、全然使えると思う。ケーブルによっても音が変わってくるし、X10はそういう細かいことの集大成ということが、聴き比べてみて、改めて分かりました。
—— ちなみにPioneer DJの機材では、ヘッドフォン以外にもエフェクターを使われてるそうですね?
K: RMX-1000と、あとEFX-500を2台。現場で一時期結構使ってましたね。今でも、たまにテクノセットをやる時に使ってます。Pioneer DJの機材は現場で使っていて、やっぱり安心感がありますよね。今はいろんなDJ機材がありますけど、あとは使いこなすのは本人次第だから。Pioneer DJさんが提示された機能を、どれだけ自分なりに使いこなせるかっていうのが、僕には大事かな。機材もどんどん進化していくし、その中でメーカー側も作っていくのは大変だろうけど、DJも追いついていかないとね。機材に負けてちゃいけないから。
—— 改めて、KRUSHさんがヘッドフォンに求めることって何でしょうか?
K: 音質や丈夫さっていうのもそうだけど、大事なのはストレスがかからないことですね。ヘッドフォンが体の一部みたいに身近になる感覚というか、そういうのがすごく大切で。DJプレイ中は選曲に集中したいし、あと僕はサンプラーを使ったり、ディレイも使ったりするから、そこにも集中したい。もし、ヘッドフォンに何か問題があると、どうしても気がこっちにいっちゃう。そこでストレスがかからないっていうのが、僕にとってはすごく重要ですね。それが結果として、プレイにも影響して、良いプレイが今度はお客さんにも伝わるわけだから、全部繋がってますよね。そういう意味では、今のところX10に関しては、ストレスは特に思い浮かばないですね。
—— “ストレスが無い”っていうことが、今日の重要なキーワードですね。
K: 音楽を仕事としている僕らみたいな連中にとっては、ヘッドフォンは仕事場で使う道具だから。うちの親父が大工で、僕も職人上がりなんだけども、職人にとってのすごく良いノミだったり、ノコギリだったりみたいなもので。そうなるともう手放せなくなるし、体の一部になっちゃう。もちろんデザインも大切だけど、僕にとっては二の次かな? けど、X10は見た目はすごくシンプルで、これはこれで機能美という意味でのデザインが優れている。良いものってすごくシンプルですからね。僕の作っている音楽も近いところがあって。どれだけサンプリングの音数が少ない中で、ドラマが作れるかっていう。もの作りって何でもそうだけど、マイナスしていくことが難しいですからね。足していくのは簡単なんだけども、クオリティを残したまま、引いていく作業っていうのがすごく難しい。そういうところが似ているところがありますし、繋がってますね。4月からまたツアーが始まるんですけど、結構、ツアーは過酷なんで、この相棒(X10)を持って行って、どこまで耐えてくれるのか、楽しみですね。
サウンドクリエーター/DJ。選曲・ミキシングに於いて抜群のセンスを持ち、サウンドプロダクションに於ける才能が、海外のクラブ・シーンでも高く評価されている。1992年からソロ活動を精力的に行い、日本で初めてターンテーブルを楽器として操るDJとして注目を浴びる。1994年に1stアルバム『KRUSH』をリリースし、現在までに10枚のソロ・アルバムと1枚のMIXアルバム、2枚のセルフリミックスアルバムをリリース。ソロ作品はいずれも国内外の様々なチャートの上位にランクイン。現在も年間、約30カ所以上のワールドツアーを敢行している。地域を越えて、多岐に渡り高い評価を得続けるインターナショナル・アーティスト。
2015年に「Butterfly Effect」、2017年のソロ活動25周年では初のラップアルバム「軌跡」をリリースと、今なお止まらず進み続けるDJ KRUSHのニューアルバムが完成。
TITLE : Cosmic Yard
LABEL : Es・U・Es Corporation
FORMAT:CD / LP
発売日 : 2018年03月21日(水)
収録内容:
01. REGULUS
02. STELLAR WIND
03. DIVINE PROTECTION feat. 渥美幸裕
04. ASTERISM (Interlude)
05. EMISSION NEBULA
06. DUST TRAIL
07. LAW OF HARMONY feat. 近藤等則 & 森田柊山
08. BOW SHOCK (Interlude)
09. LA LUNA ROUGE feat. Binkbeats
10. IGNITION
11. HABITABLE ZONE (Chapter 1)
12. SPORADIC METEOR feat. 近藤等則