「MAGVEL FADER PRO」はターンテーブリズムの第一線にいる人ならば間違いなく大絶賛でしょう。DJ KENTARO
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多彩なパフォーマンスを可能にする高い操作性・品質と豊富な機能を搭載したプロDJ/クラブ向けのSerato DJ専用2CHミキサー
—— 今回、KENTAROさんのDJスクール「WORLD DJ ACADEMY」にて取材をさせてもらうわけですが、まずこのスクールにも4セット(計8台)並んでいるターンテーブルPLX-1000について聞かせてください。
DJ KENTARO(以下K): Pioneer DJから新製品が出るときには、事前に「意見を聞かせてください」と連絡をいただくことが多くて。なので、実はPLX-1000もモニターの一人として開発時から関わっていて。最初は「こういったボタンを付けてほしい」とかいろんな機能をリクエストをしたんですけど、PLX-1000はPioneer DJから発売されるターンテーブルの第一号機ということもあって、機能に関してはやはり極力、シンプルなほうが良いだろうという話になりまして。そのほうがそれまで他のメーカーのターンテーブルを使っていた人も移行しやすいでしょうし。
—— そんな中でも、特にリクエストした部分は何でしょうか?
K: トルクを強くして、音の立ち上がりが早くなるようにっていうのは強くお願いしましたね。CDJと同じようにピッチ(=テンポレンジ)が±8%、16%、50%って変えられるんですけども、ピッチを切り替える瞬間もすごく滑らかで、これには驚きましたね。
—— ちなみにピッチの±50%っていうのは実際使ったりすることは?
K: このピッチの機能だけを使って、ロングトーンのサウンドの音程を変えて、メロディを作るっていうルーティンはやっています。今までは±8%の範囲で、さらに回転数を33回転と45回転とで切り替えたりしてやっていたんですけど、それだとせいぜい「ド・レ・ミ・ファ・ソ」くらいまでしか弾けなかったんですよね。けど、±50%まであるともっと幅広いスケールで出来るんで、いろいろ駆使すれば、もっと複雑なメロディが弾けたりとか、リズムパーターンも倍速にしたりとか、いろいろ遊べることが出来ると思いますね。
—— PLX-1000の売りの一つである、音質面に関してはどうでしょうか?
K: Pioneer DJのスタジオで聴き比べをさせてもらったんですけど、音圧がとにかく大きいですね。音のダイナミクスも優れていて、臨場感もあって。エンジニアさんも「今回は音質にもこだわりましたって」って仰ってたんですけど、新しい機種なのでデジタルターンテーブルっぽいイメージになると思ったら、逆にクラシックなモデルというか、音質面もちゃんと意識していて。そういう意味ではアナログレコードでプレイしたほうがより真価を発揮出来るでしょうね。俺も普段はSERATOでプレイしていますけど、アナログを使ったプレイもやってみたいって思いますね。
—— 他に便利だと思った機能はありますか?
ioneer DJのスタジオで聴き比べをさせてもらったんですけど、音圧がとにかく大きいですね
K: 音源ケーブルや電源ケーブルが取り外し出来たりするのは便利ですね。機材をセッティングするときにすごく助かります。
—— 続いてDJミキサーのDJM-S9(以下、S9)についてですが、こちらも開発時から参加したわけですか?
K: そうですね。特にパッドやエフェクトの部分に関しては、いろいろと意見を言わせてもらいました。審査員をやらせてもらったDJバトル『Red Bull Thre3Style』とかでいろんなミキサーを見てても、今はやっぱりパッドが重要になっていて。けど、他のメーカーのミキサーではパッドが押しづらかったり、たまに反応しなかったりして、修理もしょっちゅう必要でした。けど、S9では、壊れにくいようにゴムパッドを採用してもらって、耐久性も問題ありません。あと、エフェクターの部分に関しては、今まではオン/オフのボタンで操作するミキサーが多くて、それだと誤操作も起きちゃってました。けど、S9では「STYLE LEVERS」っていうレバーを使って、パッドとかボタンを押さなくても、瞬時にパッとエフェクトを入れられる。
—— エフェクターに関して、普段よく使っているのは?
K: やっぱりエコーとリバーブ、それからフィルターが一番プレイ中に使いますね。他にもバックスピンやヴァイナルブレイクというエフェクトがあって、普通にターンテーブルでやっていたことをワンタッチで出来るのは面白いです。あと、エフェクトに関してはユーティリティソフトを使ってエフェクトの種類を入れ替えたり、細かい調整が出来たり、他にも「SERATO DJ FX SELECT」っていうところの6つのボタンには自分で購入したエフェクトを入れたり、MIDIアサイン機能でカスタマイズすれば、サンプラーとして効果音をあらかじめ入れておけるのも便利です。効果音を出すのに今まではボタンを二度押す必要があったんですけど、これだとワンタッチで出来るのは大きなメリットですね。
—— S9で特に気に入っている部分はどこでしょうか?
K: 「MAGVEL FADER PRO」っていうクロスフェーダーがめちゃくちゃ良いです。今まで使ったクロスフェーダーの中でも、一番だと思いますね。とにかくスクラッチがし易くて、ツマミの掴み心地も良いし、動きも滑らか。それでいてフェーダーが端に行ってもカチカチと鳴ったりもしなくて、クッション性が素晴らしい。音のキレも良くて、フェーダーを少し動かせばすぐ音が出る。あと、ツマミの部分が絶対に抜けないようになっているのも安心。それから「FEELING ADJUST」っていう機能でフェーダーを重くしたり、軽くしたりとか、自分の好きなように調整できるのも良いです。耐久性に関しては、俺もずっと使っていますけど、今のところ全然問題ありません。この「MAGVEL FADER PRO」はターンテーブリズムの第一線にいる人ならば間違いなく大絶賛でしょうし、クロスフェーダーとして他の追随を許さないくらいのものを作ったと思います。
—— S9で他に気になっている機能などはありますか?
K: フェーダーシンセというのが最近面白くて。縦フェーダーを使って「ドレミファソラシド」ってシンセが弾けるんですよ。オクターブも変えられて、エコーの量とか、サイン波とかも調整出来て、パソコンがなくても、あらかじめセッティングさえしていればお手軽に使える。まだ、そんなに使ってはいないですけど、これをもっと突き詰めれば、面白ことが出来るんじゃないなかって思いますね。
—— S9はSERATO DJ専用のミキサーなわけですが、専用機であることのメリットは何でしょうか?
K: 互換性が100%あるのでとにかく楽ですね。USB一本で繋いで、ソフトウェアをアップデートさえすれば問題なく動く。他のDJ用ソフトウェアを使いたい時もボックスを使えば問題なく使えるけど、やっぱり純正のなのでSERATOのほうがより細かく、どんなボタンでもカスタマイズして使えるので、使いやすさ的に完成度が高いですね。
—— S9が発売されてから1年半以上経ちましたが、今では世界中へ普及してきているようですね。
K: ヒップホップの現場とか、ターンテーブリストで使っている人は多いです。例えばジャジー・ジェフとかを初め、アメリカの著名なDJもたくさんの人が使っているし、自分がデザインに関わったミキサーをみんなが使ってくれているのは嬉しいですね。A-TRAKなんかもS9をいろいろと自分なりの方法で使っているようで、彼のインスタグラムを見ると「これどうやってやってるんだ?!」っていうのがいっぱいあるので、自分ももっと駆使したいです。
—— ちなみに今、PLX-1000が3台、S9が2台という構成でのセットを考えているそうですね?
K: 今、フレットレスフェーダーっていうのを導入しようと思っていて、PLX-1000とS9、それぞれ1台ずつをフレットレスフェーダーを使ったスクラッチ専用にしようと思ってます。フレットレスフェーダーはスコットランドのジョン・ビーズっていう人が開発したものなんですが、クロスフェーダーが縦にも動くような仕組みになっていて、上下に動かすことでターンテーブルのトルクやスピードが変わって、音程が変わる。さらに付属のボックスでキーの調整も出来て、細かいコードを設定することも出来るんですよ。それをこれからトライしていこうと思っていて、出来れば制作にも使えたらと思ってます。
—— 自分のアルバム制作にもPLX-1000とS9を使うということでしょうか?
K: そうですね。ちょうど今、アルバムを作ってるんですけど、ミキサーとかターンテーブルの機能を使って曲を作りたいなと思っていて。フレットレスフェーダーを使ってメロディラインをターンテーブルで弾いたり、S9のフェーダーシンセを使ったり。もちろん打ち込みだけで曲を作って、それをかけるっていうのもありなんですけど、ライブ性っていう付加価値を付けることが出来るのが、ターンテーブリストとしての強みでもあるんで。S9やPLX-1000のあらゆる機能を使って、ターンテーブリズムならではの楽曲を作って、それをライブでも再現したいですね。
—— 最後にPioneer DJというブランドに関しての印象を聞かせてください。
K: DJにとっての世界スタンダードですね。世界中のクラブとかフェスを回ってきましたが、CDJだったりミキサーだったり、どこに行っても必ずPioneer DJの機材が一つはある。今だとヒップホップDJはS9を使っている人も多いし、PLX-1000も海外で見かける機会も増えています。ヘッドフォンも音質のクオリティが高いっていうのはDJ業界でも知られているし。日本発のブランドが世界の大御所DJって言われている人たちに使われているというのは、やっぱり嬉しいですね。
ターンテーブリストであり、サウンドクリエイターである日本のDJ。世界最大のDJバトル「DMC World Final 2002」において大会史上最高得点というギネスを残し、文字通り圧勝でアジアから初の世界チャンピオンになる。その後、国内のビック・イベントや海外のフェスティバルなどに積極的に出演。40日間に渡るソロEUツアーなどを収めたDVD作品「National Geoscratch」を2005年1月にリリース、同DVDに収録された”Loop Daigakuin”は、Youtubeの視聴回数300万ビューワーを越える。またNHKの番組「トップランナー」やSpace Shower TV IDなど数々のメディアにも積極的に登場し、2004年12月にはUK屈指の老舗レーベル(Ninja Tune)の音源のみを使用したミックスCD「On The Wheels Of Solid Steel」が世界リリースされる。2015年からは自身が講師を務めるDJスクール「World DJ Academy」を開校した。2016年Vol 7、”BASSCAMP Returns”は3年ぶりに日本にて開催、成功をおさめた。現在3rd Album絶賛制作中。