1993年東京都生まれ。2013年に自身を中心に結成したバンド、DATSではボーカル&シンセを担当。
また、ソロのMONJOE名義でもDJを始め、アーティストへの楽曲提供やプロデュース、リミックスなど行いバンドの枠を超えて活動中。
MONJOEさんは長らくバンドを通じての活動をされていますが 、その中でDJを始めたきっかけは何 ですか?
きっかけは、バンドのデモ制作のためにDTMのソフトとしてAbleton Liveを使い始めてからです。エレクトロニックミュージックの要素を混ぜた音楽を作るようになって、よりソフトの使い方とかを自分で勉強していくうちに、“ミックス”や“リミックス”といった、DJもしくはダンスミュージックのプロデューサーに特化した使い方があることを知って。そこからさらに使い方を深掘りしていったら、Ableton LiveでDJができることも分かって、“別にターンテーブルとかCDJを買わなくても、PCとオーディオインターフェイスとがあればできるんだ”と思って、DJを始めてみることにしました。
現在のように都内の主要なクラブでDJとして出演するようになったのは、DATSや yahyelの活動が本格化してからですか?
そうですね。バンド関係の先輩とかの内輪なパーティーで、「DJしてよ」みたいな感じで誘ってもらって、ちょっとだけやったことはあったんですけど、それは本当に遊びだったので、今みたいにクラブに出演するようになったのは、DATSやyahyelとしてのバンドの活動を知っていただけるようになってからですね。
そもそも電子音楽に興味を持ったのはどういうきっかけ ですか?
僕はもともとNirvanaとかOasisとかRadioheadみたいな90年代のオルタナティヴ・ロックから音楽に入ったんですけど、その中でもRadioheadが大好きで。作品を追っていくうちに、彼らが現代音楽とか電子音楽とか色々な要素を取り込んでいることが分かって、そこの流れに一人のリスナーとして食らい付きたいなという想いからエレクトロニックミュージック全般に興味を持って、自分から掘っていくようになりました。それこそDJを 始めた時は、Nirvanaの“Smells Like Teen Spirit”とか、BlurとかOasisとか、自分の好きなロックのダンス・リミックスみたいなをかけていましたね。
エレクトロニックミュージックを掘っていくようになったのはいつ頃のお話 ですか?
17〜18歳ぐらいの時ですね。だから実際にクラブに行って聴いてみたくても行けなかったんですよ。それが凄い悔しかったのを今でも覚えてるんですけど、当時『SONICMANIA』はID確認無しで入れたので、18〜19歳ぐらいから行ってました。それがほぼ初のクラブ体験でしたね。
クラブに行って、クラブでDJをするようになってからは、プレイする曲も変わりましたか?
変わったと思います。やっぱり初めは、プロフェッショナルなDJの方々が作り上げる陶酔的な雰囲気とか、クラブで深い時間を過ごすためのミックスとかは意識していなかったので、ただただ自分が好きなロック寄りの曲をかけていましたし。でもバンドと並行して、エレクトロニックミュージックそのものを聴くのはずっと好きだったので、今はSoundCloudとかBeatportとかで、自分がピンとくる曲が見つかるまで、あの膨大な量の楽曲をひたすら聴いています。以前と比べると、テクノとか4つ打ちの曲をかける割合は増えましたけど、基本的には自分のルーツにあるものとか、好きな音楽をかけないと説得力に欠けると思うので、ビッグビート的なロックの文脈を辿った音楽をかけるようにしたり、あとはイベント毎にrekordboxでプレイリストを作っているので、イベント自体の雰囲気とか自分の出演時間帯、サウンドシステムの大きさとかも考えて選曲するようにはしていますね。
ちなみに、よりDJ的な視点を持つようになってから、“この人凄いな”って思ったDJはいましたか?
yahyelとしてUS・オースティンの『SXSW』に行った時に見たDubfireは凄かったですね。
『SXSW』って巨大なフェスティバルで、本当に街のそこら中で音楽が鳴っていたんですけど、ラインナップを見る通りやっぱり“バンドのライヴ”がメインだから、どれもバンドサウンドで、エレクトロニックミュージック好きの僕としては「4つ打ちが聴きたいな……」って禁断症状みたいな気分になってしまって。その時の『SXSW』に唯一、テクノとか4つ打ちのダンスミュージックが聴ける夜だけオープンするステージがあって、「どうしても行きたい」って言って行ったら、たまたまDubfireがやってて。それが信じられないぐらい良くて、夢中になって朝まで踊り続けましたね。
今はPCではなく、CDJでプレイされていますが、移行したきっかけは?
一時期、yahyelの篠田ミルと2人でDJしていた時があったんですけど、2人ともDJとして経験を積んできたわけではないし、バンドの名前有りきで呼んでいただいていた部分があって、DJとしては言わば素人同然だったので、自分たちが一番慣れてる機材と PCでやっていたんです。そしたら、ある日突然、ミルが「USBとCDJを使ってやるわ」と言い出して、遠征に行った時のDJとか、スタジオでDJの練習する時とかもUSBを使うようになって。僕だけオーディオインターフェイスとPCをせっせと持ち運んでセッティングしてて、ミルだけが身軽になったのが少し悔しくなって、その日から僕もUSBを使ってCDJでプレイすることにしたんです。
CDJのような機材は、バンドの活動や制作では滅多に触らないタイプの機材だと思いますが、MONJOEさん自身はCDJを操作することの面白さをどういう部分に感じていますか?
PCからCDJに移行した身としては、やっぱりジョグが触れるのが嬉しいですよね。最早、“ジョグに触りたいからもっとクラブでDJしたい” みたいな感覚にはなってますね(笑)。Ableton LiveでDJしていた時は、BPMもシンクできて、曲と曲の繋ぎ方から、エフェクトとかオートメーションのかける部分まで、あらかじめ自分で設定できてしまうので、以前は仕込んであるものをただ流しながらミックスするだけの作業だったんですよ。でもCDJにしてからは、リアルタイムで、その場の状況に応じて反射的にミックスを考えるようになったので、そこはDJの面白いところかなと思っています。実は、CDJを使い始めたばかりの時は、SYNCボタンを使って楽をしていたんですけど、ある時に、自分で“DATSだから/yahyelだから呼んでもらってる”という状況に恥ずかしくなって、“もっとちゃんとDJを練習しよう”というモードになって。その時に、大学の先輩でもあって、一番身近にいるDJのLicaxxxにアドバイスをもらいに行って、リアルタイムに手を使ってミックスをする意味とかを教えてもらったんです。それからは、Ableton Liveでシンクして完璧にミックスするよりも、テンポとかグルーヴ感に若干のズレが生まれた時に、それを直しながらミックスしていくのも一つの醍醐味だと思うようになって、もっとDJに親しみやすくもなりましたね。
DJとしても様々な現場で活動をするようになってから、バンドとしての活動にフィードバックされたことはありましたか?
もともとエレクトロニックミュージックが好きで、今のバンドを始めた当時もクラブに遊びに行ってましたし、僕の中ではあまりライヴハウスとクラブが分断されているような感覚は無いんですね。自分にとっては同じような場所として捉えていたから、瞬間的にインスピレーションを受けることはあったかもしれないですけど、あまり“クラブでやってみたことをバンドに持ち帰る”みたいなことは元から意識したことが無いですし、“DJでああしたから、バンドでこうしてみよう”みたいなことは今でも無いです。音楽好きとしてフラットに両立させていますし、むしろDATSはそこの分断を無くすために活動しているバンドでもあるので、バンドをやりながらDJとしても活動するのは僕にとっては自然なことなんです。だから逆に今だと、DJとして呼んでいただくと、MONJOEの横に“(DATS)”とか、以前だったら“(yahyel)”とかクレジットが付きますけど、それが無くても通じるぐらいにはなりたいですね。それは今の目標です。
仮に MONJOEとしてダンストラックをリリース すると、DATSとはまた違った、よりひとりのDJ/プロデューサーとして認識されるようになるかもしれないですね。DJ向けの楽曲制作はされていますか?
実は作ってはいるんですけど、まだ人前でかけたことは無いです(笑)。でも確かに、僕の中で唯一DJとバンドに差があるとしたら、バンドでやった方が良いこととか、そういう音楽はDJではやらないようにしていて、逆に音圧的にもサウンド的にもDJとしてプレイした方が良いような音楽はバンドではやらないようにしているので、そういうことかもしれないですね。
このXDJ-RX2がご自宅に設置されていると伺っていますが、ご自宅でDJの練習はされていますか?
やってますね。DJ出演日の本番前は練習してます。あと、僕の作業机は2段になっていて、下の段にPCとキーボードがあって、上の段にXDJ-RX2を置いてるんですけど、PCでの作業が行き詰まった時に、気分転換として立ち上がってちょっと触る、みたいなこともよくしてます(笑)。加えて、制作の面で言うと、Ableton Liveで制作をしている時にPioneer DJのFILTERとDUB ECHOが欲しくなる時があって。2つともエフェクトとしてかかり方がオリジナルなので、作り込んで近付けることはできても、求めているPioneer DJのFILTERとDUB ECHOの風合いにならなくて、そういう時にオーディオインターフェイスを繋いで、XDJ-RX2で直接エフェクトをかけるのにも使ってますね。実際に楽曲を作っている時に、「ドロップにいく時に、Pioneer DJのDUB ECHOっぽいエフェクトのかかり方が良いよね」って話したりすることが多いので、プラグインとかで発売したら結構需要あると思うんですよね。でもXDJ-RX2自体に関して言うと、ジョグとEQとエフェクトを触るばっかりで、まだジョグの下のPERFORMANCE PADを全然使いこなせていないので、今はここを使えるようになりたいなと思ってるんですよね。
確かにクラブに常設されているCDJにはこのPAD付いてないですね。しかし、PERFORMANCE PADで使える機能は、HOT CUEやBEAT LOOPといったCDJに搭載されている機能と同じなので、XDJ-RX2で使いこなせると、現場のCDJでも使えるようになります。他に、今後DJでやってみたいことはありますか?
アナログ(レコード)でもDJが できるようになりたいですね。レコードとターンテーブルでDJをしたことがないので、いつかできるようになってみたいですね。例えば、Floating Pointsとかって作品とDJが全然違うじゃないですか。僕が観た彼のDJは全然ディスコ〜ファンク系で、最初はそれってアリなのと思ったんですけど、今となっては彼ぐらい懐の広いDJにもなってみたいなと思いますね。あとはやっぱりアナログは音が良いなと思いますね。