横浜在住のTaimei Kawaiによるソロプロジェクト。Bass music/Techno musicといったクラブサウンドを軸に制作した個性的な楽曲は国内外問わず高い評価を得ており、これまで自身 の主宰するレーベル「TREKKIE TRAX」や「Maltine Records」よりEPをデジタルリリース、2015年にはレコード形態でのEPやCDアルバムをリリースするなど、積極的な制作活動を行っている。
またポーター・ロビンソン、tofubeats、初音ミク、東京女子流、カプコンといったメジャーアーティストにRemix提供など行っているほか、人気マンガ家「浅野いにお」がキャラクターデザ インを務めた映像作品「WHITE FANTASY」では全編において楽曲を提供。2016年には仮面ライダーエグゼイドの主題歌である、三浦大知の「EXCITE」の作曲・編曲を共同で手掛け、同楽曲はオリコンシングルチャート1位を記録した。その勢いは国内だけにとどまらず、フィンランドの「Top Billin」やイギリスの「L2S Recordings」「Heka Trax」「Activia Benz」などからもリリースを行ない、イギリスの国営ラジ オ局「BBC Radio1」や「Rinse.fm」「Sub FM」でも楽曲が日夜プレイされている。
Carpainterの3rdアルバム「Future Legacy」が2019年11月13日にTREKKIE TRAXよりリリース決定。Carpainter初の女性ボーカル「Utae」を迎えたリードトラック「Carpainter - O.V.E.R feat. Utae」を始め、2019年2月にリリースした「Declare Victory」で提示したジャパニーズテクノへの回帰と、テクノ・ブレイクス・レイヴといった様々なダンスミュージックCarpainterが再構築し、独自の世界観に落とし込んだ「ジャパニーズテクノ・リバイバル」とも言えるアルバムとも言える。
早速ですが、最新アルバム『Future Legacy』に収録されている“Tiger&Dragon”は、TORAIZのSP-16とTORAIZ AS-1のみで制作したそうですね。先ず、そもそもCarpainterさんは普段どういうきっかけで曲を作り始めるんですか?
曲を作り始めるきっかけとして1番多いのは、クラブに行って、ダンスミュージックを全身で聴いて踊っている時に、「こういうの作りたいな」と思って、家に帰ったらすぐにそのトラックを真似して作ってみることですね。
そういう時は、曲のパーツで言うと、どこから作り始めるんですか?
曲によるんですけど、やっぱりビートからが多いですね。でも全部そうではなくて、ビートからか、もしくは音そのものから作り始める時もありますね。例えば、サンプルを探している時に面白いサンプルを見つけたら、シンセサイザーとかを使ってキーになりそうな音をひとつ作ってみて、それを使って曲を作り始めたりします。
それで言うと、“Tiger&Dragon”はどういう制作過程を経て出来上がったんですか?
“Tiger&Dragon”は、普段の制作に変化を入れたいと思っていた時に、「TORAIZシリーズに入っているサンプル音源を使って、TORAIZシリーズを操作するだけで1曲作ろう」っていうルールを設けて作ってみた曲です。なので、使っている音は全部プリセットとしてTORAIZに入っているもので、あと一応、一発録りという目標もありました。
では、“Tiger&Dragon”のどの部分がSP-16で作られていて、どの部分がAS-1で作られているか教えていただけますか?
基本的に、ビートを始めとするリズム隊、それに沿って細かく入っている声ネタ、あとは曲の中盤に入ってくるレイヴっぽいメロディ部分はSP-16で作っています。中盤のメロディの部分は、SCALEを使ってリアルタイムで叩いて弾こうかとも考えたんですけど、先にパーツだけ作って、録音中はAMP ENVELOPEのHOLDを使ってサンプル演奏時の長さを延ばしたり、歯切れ良くさせたり、という調整だけをしました。演奏方法としては、最初から最後までのビートループをあらかじめPATTERNに並べておいて、PATTERNを手動で切り替えながら、パラメーターをいじって曲を展開させています。なので、自動で切り替えてくれるアレンジメント機能は使ってません。
そして、曲の前半と後半で繰り返し鳴っているメロディだけ、AS-1で作りました。 これは、MIDI経由でSP-16にAS-1を繋いで、AS-1のOUT/THRUからSP-16の方にメロディパーツを送っています。それで、録音をしている時にリアルタイムでAS-1のエフェクトを操作しました。作業としては、僕が割とDAWで作る時にやっている、MIDIでソフトシンセを繋いで音をDAWに送っているのと一緒ですね。なので、SP-16がDAWで、AS-1はインストゥルメンタルみたいなイメージで使ってます。
サンプル音源は主に何を使っているんですか? 選んだ理由なども教えていただけると。
本当に色々使っているんですけど……、やっぱりテクノが好きなので「909」って書いてあるものが多いですね。でも今回は、最初にAS-1でフレーズを作るところから曲を作り始めたんですけど、それがプリセットからだったか、AS-1をいじって自分で一から作ったのかは覚えてないので、何か特定のサンプル音源がキーになったわけではないです。確か、ビートもほぼ同時並行で作っていたと思うので、SP-16で作ったビートとAS-1で作ったフレーズを組み合わせたという感じです。
“Tiger&Dragon”は、サウンド的には“往年のレイヴ要素を纏ったハウス・トラック”という印象を受けたんですが、実際にはどういったジャンルもしくはスタイルの楽曲を参照しているんですか?
色んな要素が詰まっている今回のアルバムの中では、確かにレイヴっぽくはあるんですけど、どちらかと言うとゲットーテックとかゲットーハウスをかなり意識して作りました。アーティストで言うと、L-Vis 1990とかですね。なので今回、一発録りをしようと思ったのも、“ゲットー感”を出したいなという意図があったんです。実際は上手くいかなくて何回も練習して録り直したんですけど(笑)。普段の制作だとDAWがメインにあって、TORAIZはインストゥルメントのひとつとしてパーツを作るのに使って、後にPCで細かく編集しているんですけど、今回は敢えて逆のことをやってみようという感じで、“一発録り感”を大切にしました。
今のお話の中で、アルバム全体としては色々な要素があると仰っていましたが、全体としてはどういうテーマで作り上げたんですか?
ここ最近はアルバムを2年おきぐらいに出しているんですけど、アルバムはその1〜2年ぐらいの間に作った良い曲を、平坦に言えば“集めた”という感じなんですね。でもアルバムなので、幅が広くても、ひとつの質感にまとまっていたり、筋が通ったものを出すというのは決めています。それで言うと、今回のアルバムはミニマルでフロアユースなテクノとかを沢山入れていて。もともと今回のアルバムに収録しているような、テクノの曲自体は作っていたんですけど、ここまで入れるのは初めてですし、そこが今までと1番違うところだと思いますね。あと今回初めてやったことで言うと、アルバムの最後に“O.V.E.R feat. Utae”っていう女性ヴォーカルが入っている曲があるんですけど、メロディーと歌詞を初めて自分で書いたんです。ヴォーカルトラックだけど、他の曲とも質感が合うようにすることを意識しながら、僕の好きなジャパニーズ・テクノを目指して作りました。
初めて尽くしのアルバムなんですね。“Tiger & Dragon”の制作コンセプトもそうですけど、今回は全体的にアルバム制作に対する意識そのものがフレッシュになった部分もあったんですか?
そうですね。今まではどんな曲を作る時も無意識的に“クラブに耐え得る”というのを最低条件にしていたのを、リスニング向けの曲はクラブに耐え得なくても良いから、完全にリスニング用に作ろうという、完全に新たな意識と視点がここ最近出てきて。ダンスミュージックのアルバムを聴いていると、インタールードとか非ダンスミュージックの曲とかも結構入ってるじゃないですか。でも他の曲と質感が一緒でカッコイイなと、昔よりも俄然“良いな”と思うようになったんですよね(笑)。だから今回のアルバムではおそらく初めて、完全にノンビートのインタールードとかも入れたりしていて、ダンスミュージックのアルバムでもダンスミュージックのフォーマットに捉われない方がカッコよくなることを本当の意味でちゃんと知れたような気がしますね。
個人的にCarpainterさんがテクノとかがお好きなのは知っていましたけど、こうして作品になったものを聴いてみると、やはり意外だなって思いました。でもどうして、今このタイミングで変化をつけようと思ったんですか?
これはちょっとクラブシーンの話になってしまうんですけど、今ってトレンドが無いじゃないですか。それでみんなが何をしているかと言うと、それぞれが自分のルーツを追求したりだとか、自分がカッコイイと信じていることをやったりしていて。僕自身もその流れを切に感じていますし、それがこれからもっと普通の流れになっていくんだろうなと思います。それで、僕も今までは、自分の好きなテクノの質感を入れながらも、その時のトレンドを押さえたようなアルバムを作ってきたんですけど、今回はそれを完全に払拭して、自分が本当に好きでやりたい音だったり、自分のルーツにもっと実直な音を沢山入れたアルバムを作りたいと思ったんです。そういう作品を出すことが、今のシーンにも相応しいんじゃないかなとも思っていますね。
なるほど、『Future Legacy』はシーンへの意思表示でもあると。
そうですね。あとは、今ってベース・ミュージックだったアーティストとか本当に色んな人が“テクノ”をやっているんですけど、テクノを他のジャンルとの差異で語らなきゃいけなくなった時に、“硬い”とか、多少は“暗い”とかのイメージがあると思うんです。でも僕の好きなテクノって、ある程度キラキラしていると言うか、今回のアルバムのタイトルにも入っているフューチャー感とか、今で言う“90年代のレトロフューチャー感”があるもので。そういうテイストの、明るめなテクノが今もう少しあっても良いんじゃないかなっていう想いもあって今回のアルバムを作ったんです。だから“テクノ”と言いつつも、バレアリックな雰囲気があったり、多幸感があったり、そういう要素を意識的に入れていて、もし「こういうのが聴きたかったよ、これこれ!」って思ってくれる人がいたら嬉しいですね(笑)
ただ“テクノ”って言うのは本当に曖昧な表現というか、音楽的にも歴史的にも“テクノ”の中には様々な種類があって、簡単に共通認識が計れるものではないですからね。でも“『Future Legacy』がテクノを知るルーツになった”みたいな人がいたら、それもCarpainterさんにとっては嬉しいことですよね。
そうですね。もちろん聴いてくれる人の中には、ダンスミュージックのアルバムを初めてちゃんと聴くって人もいると思うんです。僕も初めてデトロイト・テクノを聴いた時はレトロフューチャーなんてもちろん知らなかったですけど、「何か分からないけど新しい!」って思った感動は未だに忘れられないですし。もう僕が散々“テクノ”って言ってしまってますけど、「テクノを勉強してから聞こう」とか思わず、「繰り返しだけど、この音カッコイイ」とか、自分なりに良さを発見するみたいな感じで聴いてもらえたら嬉しいですね。
ちなみに『Future Legacy』に収録されている他の楽曲ではSP-16とAS-1は使用されているんですか?
今回のアルバムでは、あくまで「SP-16とAS-1だけで1曲作る」というルールを優先したので“Tiger & Dragon”以外にTORAIZを使っている曲は収録していないです。でも最近は2つともよく制作に使ってますよ。DAWでは作りづらい入り組んだパーカッションをSP-16で作ったり、曲にテクスチャーを与えるための裏でなっている細かい音をAS-1で作ったり、それぞれが要所要所で登場してる感じですね。
どちらもそういう音の良さ云々は前提としてあるんですけど、まず単純に操作していて楽しいんですよ。どうしてもDAWだけで作っていると、座ってPCの画面を見ているだけの作業になってしまうので、マンネリ化して、行き詰まってしまう時があって。僕が作っているのでDAWでもSP-16でも同じように聴こえるかもしれないんですけど、作業が進まなくなった時にSP-16でビートを打ってみたり、「SP-16で作った方がカッコいい曲になる」って思って作業したりするだけでも、実際に効率が良くなるんです。TORAIZのシステム由来の操作で、簡単にビートが打ち込めたり、直感的に作業ができたり、良い気分転換になることが多いですね。
それはTORAIZに限らず、総じてハードウェアを使うことの良さかもしれないですね。今や誰でもDAWさえあれば曲作りを始めることができて、性能とかコストなどの面で言えば、それだけで完結することも可能ではありますけど、併用すればさらに創作の可能性は広がりますし。その辺りは、Carpainterさんはどういう考えのもとで使い分けされているんですか?
僕自身も最初はDTMから入ってDAWだけで作っていましたけど、初めに聴いていた音楽がデトロイト・テクノとかハードウェアでしか作ってないようなジャンルだったので、どうしても自分の曲にそういう質感が欲しくなっても、DAWだけだとなかなか難しいなと思う時があって。そういう時に試しにハードウェアを使ってみて、良いところを取り入れながらやってきましたね。たまに“ハードウェアだけを使う”みたいに制限をして作るのは良いんですけど、個人的には、普段はDAWで作っている曲にもっと良い質感を与えるためにハードウェアを使うという感じなので、ハイブリッドと言いますか、どちらも同じぐらいの位置付けで使っています。
あとはDAWで作ってると、僕は基本的に全部ピアノロールでやっているんですけど、ずっと同じ書き込み方を続けていると“このビートが良いのかどうか”が自分で分からなくなってしまうんですよ。そういう時に、SP-16のステップシーケンサーを使って敢えて手で打ち込んでみて、自分の感覚を再確認する、ということもやってます。
TORAIZで制作する時によく使うお気に入りのエフェクトとか機能はありますか?
よく使うエフェクトはDISTORTIONですね。音が強く太くなるので使ってます。単純に音量を大きくしても別に良いんですけど、この“Tiger & Dragon”みたいな「このフレーズ一本で勝負する」という感じの曲の場合、ビートパターンに入っている特徴的なフレーズとか音をより前面に際立たせることができるんですよ。あとは、リズム隊を構成している細かな軽めの音にFLANGERをかけて、唸り効果で音を浮き立たせたりもしてます。
SP-16とAS-1を使っていて便利だなと思うのは、 CCモードでSP-16からAS-1をコントロールすることができたり、AS-1で使ってる音とかフレーズファイルを簡単に読み込めることですね。もうAS-1で結構な数のフレーズを作っているので、使いたい時にすぐにSP-16にアサインできるのは良いですね。
では最後に、SP-16とAS-1の組み合わせで今後やってみたいことや、作ってみたいトラックはありますか?
今回のアルバムで初めて入れたノンビートの曲はTORAIZで作ってみたいですね。ダンスミュージックのフォーマットに捉われていない、いわゆる非ダンスミュージックの曲を作ってみたいです。
Interview/Photo: Hiromi Matsubara
モノフォニック・アナログ・シンセサイザー TORAIZ AS-1は、音楽制作やライブパフォーマンスに唯一無二のアナログサウンドと無限のインスピレーションを与えます。Dave Smith Instruments社の Prophet-6 のアナログ・ディスクリート回路をベースに共同開発されています。さらにタッチパッド式の KEYBOARD や SLIDER といった、音楽制作時のインスピレーションを刺激する直感的な演奏インターフェースを搭載しています。
さらに詳しくDave Smith Prophet-6で採用されているアナログディスクリートフィルター回路の搭載により、楽器のような豊かなサウンド表現を演出します。さらに、購入してすぐに音楽制作、演奏を始められる2GB分のLoopmasters社製サンプル音源や、ステップ単位での多彩な打ち込みができるステップシーケンサー、外部入力音を即座にサンプリングするLIVE SAMPLING機能により、素早く直感的にアイデアを形にし、自分だけのフレーズを次々に生み出すことが可能です。
さらに詳しくSP-16は、音質は抜群。音が太くてクリアで、フィルターもアナログ回路を通っているから、それだけで音もリッチになるんです。
曲作りを始めたい人は一回これを触ってみたら、こんな簡単にフレーズって生まれてくるんだってなると思いますよ。
AS-1はプリセットの数も豊富で、しっかり使える音色ばかりで、つまみいじってるだけでも遊べるし、制作のヒントになるアイデアの宝庫です。
ここ最近で一番DJから学んでバンドに大きくフィードバックがあったのは、ABBAの“Dancing Queen”でしたね。DJから学ぶことは本当に多いですよ。
ちゃんと現場の声や意見を吸い上げた上で開発されている機材は信頼出来ますよね。
DDJ-SX3が発表された時には、「こういうのが欲しかったんだよ!」って、すぐに飛びつきました。
何のためにミキサーにチャンネルが4つもあるのか、何のために機材のボタンやノブがこんなにあるのか考えて練習していくと使い方は無限にあると思います。
古い機材だとビットレートが低いことで音が粗い質感になることがその機材の個性になることもあると思いますが、TORAIZシリーズにとってのアナログフィルターは、そういうハードウェアの音の個性を示すポイントになっていると思います。
DDJ-1000に乗り換えて、さらに“カマしたった”感みたいな部分が増えましたね。
私はスクラッチとか、ジャグリングとか技術的なところがメインではなくて、どっちかと言えば、グルーヴでDJプレイをするタイプなので。『Red Bull 3Style』へ出場する際に、DDJ-XP1を使うことで何か自分の技術的な部分を補えるんじゃないかと思って、すぐに決めました。
見た目はすごくシンプルでクールだけども、それぞれの箇所がものすごく考えられていて、全てに関して意味がある。
XDJ-RX2はプロとアマチュアとの境界にある機材だと思うんですよ。
世の中のDJ達はきっとみんな感動したと思うよ。これは最初に感じたS9の魅力だね。
「MAGVEL FADER PRO」はターンテーブリズムの第一線にいる人ならば間違いなく大絶賛でしょう。
「MAGVEL FADER PRO」は本当に最高だよ。スクラッチDJにとっては夢のようなクロスフェーダーだね。
ミキサーもターンテーブルも、よりDJの意見を取り入れたものを作ったっていうのが明確に出てますね。
恐らくこの価格帯でここまでの空間表現が可能な同軸スピーカーは、他にはないと思います。