92年、J.Roccを中心に結成後、本拠地である南カリフォルニアのオレンジカウンティを中心に着々とメンバーを増やし、さらにベイエリアからは後にInvisibl Skratch PiklzのメンバーにもなるD-StylesとShortkutも加入。わずか数年で10名以上を抱えるクルーとして成長し、自らオーガナイズするクラブイベントやラジオなどで活動する。その一方、中心メンバーであるJ.Rocc、Babu、Rhettmatic、Melo Dが様々なDJバトルに出場。彼らがITFチーム・ワールド・チャンピオンの2連覇(97年、98年)を果たしたことで、Beat Junkiesの名前は一気に世界へ広まっていった。
まず初めに、ビート・ジャンキーズ結成の経緯を教えてください。
(Babu 以下B) : ビート・ジャンキーズのメンバーはそれぞれ、80年代の半ばから後半に、モバイルDJとして活動していたんだ。モバイルDJというのは、ハウス・パーティーや結婚式などでDJをすること。Jロックが、ビート・ジャンキーズという名前を決めて、仲間を集めてクルーを1991年~1992年頃に結成したんだ。
今年の4月15日にBeat Junkies Institute of SoundというDJスクールを設立した経緯を教えてください。
(B) 俺たちは20年間もビート・ジャンキーズとして活動し、ビート・ジャンキーズという名前はブランドとしても強いインパクトを持ってるから、会社を作ろうということになったんだ。ビジネス・パートナーを見つけて、ビート・ジャンキーズという会社を設立したんだよ。スクールの話もその時に出たんだけど、まだ心の準備ができてなかったから、オンライン・ビジネスからスタートさせた。beatjunkies.comで、ユーザーが楽曲をダウンロードできるレコード・プールをまずは始めた。そこでは、ビート・ジャンキーズのメンバーが実際に使ってる曲やリミックス、エディット、クラシックスなどのDJツールをユーザーに提供している。その後に、Dスタイルズが「学校を始めよう」と言い出して、「プロ・ボクサーは現役で戦わなくなると、ジムを立ち上げて、後世に技術を継承するだろ?」って言ったのが印象的だった。俺らはみんなプロとしてDJしているけど、未来のことを考えて、学校を作るタイミングが今だと思ったんだ。生徒にDJの技術を教えることで、俺の人生も変わったよ。
(D-Styles以下 D):今まで友達に個人的に教えたり、プライベート・レッスンで人に教えたことはあったけど、自分たちでDJスクールを立ち上げられないかなって考えるようになったんだ。ビート・ジャンキーズには独自のDJスタイルとブランドがあるし、後世に技術を伝えていく義務があると思った。今まではDJスキルをシークレットにしていたけど、俺たちが引退すればそのスキルは消えてしまう。だから、次の世代にそのスキルを伝えないといけないと思ったんだ。
(Rhettmatic以下 R): それぞれ個別にDJとして活動しているけど、ビート・ジャンキーズが20周年を迎えた時に、クルーとしてもっと一緒に活動するべきだとみんな感じていた。そして、DJスクールを作ることは、DJコミュニティへの俺たちのお返しでもあるんだ。
本当にビート・ジャンキーズのメンバーからここでレッスンを受けられるんですか?
(B) そうだよ。この学校は週6日営業していて、俺たちは全員先生をやってる。1日にビート・ジャンキーズのメンバーが3、4人いることもよくある。ここのDJスクールはとてもユニークなんだ。俺たちは、DJのテクニックだけじゃなくて、DJの歴史も学生に教えているんだ。3週間生徒に教えるだけで、彼らの上達はとても目覚ましいよ。
(D) このDJスクールは、ある意味総合格闘技のトレーニング施設みたいなもの。総合格闘技では柔術、タイ・ボクシングなどを組み合わせるわけだけど、同様にビート・ジャンキーズのメンバーはそれぞれ得意分野があるから、それを複合的に教えられるんだ。DJというのはアンダーグラウンドなアートフォームだから、学校を作るなんて信じられなかったけど、今はスクールの存在に意義を感じるよ。
どういう年代の生徒が多いんですか?
(D) 7歳から50歳までだから幅広いよ。
(R) キッズ向けのクラスがあるんだけど、子供2人に授業を受けさせてから、お母さんが大人向けのクラスを受けて、家族ぐるみでここに通う人もいるよ(笑)。
(B) 子供から大人まで来るけど、意外に女性が多いんだ。そしてあらゆるレベルの生徒が来る。初心者も来るし、ワールド・チャンピオンも来る。俺たちにとってこのコミュニティが一番大切なんだ。ここに遊びに来れば、何時間もDJの練習をしたくなるし、DJカルチャーを愛する人にとってはとても心地いい場所で、アットホームな気分になれる場所なんだ。ロングタゴンという巨大な8角形のテーブルでDJできるようになっていて、12人が同時にプレイできる。日中の授業が終わると、夜はオープン・ターンテーブルと言って、みんな自由にスクラッチの練習ができるんだ。初心者の人も来るし、DJクレヴァ、プロリフィック、DJ IQみたいな有名なDJも突然遊びに来るよ。こういうトップDJとスパーリングできる場所があるっていうのは、素晴らしいことだと思うよ。
このDJスクールでPioneer DJのDJM-S9を使用しているようですが、その理由を教えてください。
(B) このDJスクールにはいろいろなブランドのミキサーが置いてあるけど、個人的に一番好きなのはDJM-S9なんだ。ダイレイテッド・ピープルズのツアーでも使ってるよ。とにかくこのミキサーのクロスフェーダー” MAGVEL FADER PRO”が大好きなんだ。あと、パッドも気に入っていてよく使ってる。それにSeratoと完璧に同期するところも気に入ってる。俺はスクラッチャーだから、このクロスフェーダーのフィーリングと機能性が最高なんだよ。ツアーをするときは、DJミキサーをかなりヘビーに使うけど、” MAGVEL FADER PRO”がヘビーユースに耐えられるから安心なんだ。このミキサーの不満は何もないよ。
(D) Pioneer DJの機材は昔からハイクオリティとして知られていて、DJ業界ではスタンダードになっている。ミキサーの音質は最高だし、音量を上げ過ぎても歪まない。さらに、Pioneer DJが開発した” MAGVEL FADER PRO”は本当に最高だよ。クロスフェーダーのフィーリングをどのくらい軽くしたいか、どのくらいシャープな切れ味にしたいかを調整できるから、俺らみたいなスクラッチDJにとっては夢のようなクロスフェーダーだね。Low End TheoryというイベントでもDJしているけど、そのクラブでは新しいPioneer DJのDJM-900NXS2を使っている。このミキサーも”MAGVEL FADER”※1が搭載されていて、音質も最高だね。
※1:DJM-900NXS2に搭載されているMAGVEL FADERは操作フィーリングをお好みに調整することはできません
(R) 俺の場合は、DJM-S9はターンテーブリストとクラブDJの両方にとってバランスのいいミキサーなんだ。Pioneer DJのターンテーブルPLX-1000も気に入っている。
DJM-S9のデザイン性で気に入っている点はどこですか?
(D) ミキサーのパッドがいいよね。ハードユースにも耐えられるパッドなんだ。キューポイントをよく使うから、パッドは欠かせない。
(R) パッドでドラムを叩いたりもするよ。
音質はどうでしょう?
(B) 最高だね。Pioneer DJの製品は昔から音質が良いからこそ、世界中のクラブでスタンダードになっているんだ。そうだろう?
(D) Seratoとの相性は抜群だよ。俺はSeratoのTape Echoをよく使うんだけど、DJM-S9はエフェクトのコントロールにも便利だね。
(R) 俺はSeratoのエフェクトよりも、DJM-S9に内蔵されたエフェクトを使う方が好きなんだ。
(D) DJM-S9にはピッチコントロール機能があるのも知ってるけど、まだそこまで使いきれてないのが正直なところだね。その機能を使うと、ターンテーブルをキーボードのように演奏できるんだ。
Seratoとの相性はどうですか?
(B) すごく良いよ。Seratoの中にTape Delayというエフェクトがあるんだけど、それをいつでも使える状態にしてある。DJM-S9のコントロール・ノブを使って、ディレイを自由自在にコントロールできるところも素晴らしい。ミキサーの上でエフェクトがアクセスしやすいレイアウトになっているのもいいね。
Pioneer DJのターンテーブルPLX-1000もこのスクールで使っていますが、お気に入りのポイントはどこですか?
(D) PLX-1000の±50までピッチを変えられる機能が大好きなんだ。いろいろなクリエティブなスクラッチができる。他のブランドにはそういう機能がなかったんだ。
(R) RCAのケーブルも取り替えられるのも便利だね。
それでは最後に、プロのDJを目指す人へアドバイスをお願いします。
(B) とにかく練習することだね。人前でDJする前に、最低でも10,000時間は練習したほうが良い。技術を磨いて、DJカルチャーについて勉強することだね。サポートが欲しかったら、ぜひBeat Junkies Institute of Soundに遊びに来るといいよ。世界中のDJから電話がかかってくるんだけど、彼らは休みを利用して、ここでレッスンを受けるんだ。ビート・ジャンキーズのメンバーを指名して、プライベート・レッスンを受けることもできる。実はこれから、イギリス人のお客さんがここでプライベート・レッスンを受けることになっているんだ。その人の奥さんが彼の誕生日に「バブーとの3時間のプライベート・レッスン」をプレゼントしたんだ(笑)。このスクールはオープンしてまだ間もないけど、世界中から応募があるしレスポンスが凄い。
(R) まずはDJに対して情熱がないといけない。俺たちがここまで長く続いているのはDJが大好きだからなんだ。ただ有名になりたいとか、お金持ちになりたいという理由だと続かないよ。
(D) DJやターンテーブリズムに興味があるんだったら、一晩では上手くなれない。徐々にスキルを身につけないといけないし、金と名声のためにやりたいんだったらやめた方がいい。最終的にはスキルとセンスが大切なんだ。
日本から授業を受けたい人は受けに来れますか?
(D) もちろん。どんどん日本からスクールに学びに来て欲しいよ。将来的には日本でもスクールをやりたいんだ。
最後にPioneer DJについてのコメントをお願いします。
(D) Pioneer DJが次に何をやるか興味があるね。Pioneer DJはいつも時代の一歩先を行ってるから、何か新しいミキサーやターンテーブルを発表すると思うんだ。楽しみだね。
(B) Pioneer DJの機材は大好きだよ。このスクールでもPLX-1000のターンテーブルとDJM-S9のミキサーを使わせてもらっている。ビート・ジャンキーズにとってこの学校はただのビジネスではなく、もっとパーソナルなものだから、Pioneer DJが俺たちのDJスクールとDJカルチャー全般をサポートしてくれてることにとても感謝してる。